目まぐるしく移り変わる現代社会において、自分軸をもってしなやかに生きるためには…
先人たちの知恵の中にそのヒントが見出せます。
私たちは生きていくための食物も空気も、すべて自然から受け取っています。つまり人間の生命活動の源は、天と地からなる大自然(大宇宙)にあるといえます。対して人の体 (小宇宙)は、四季の移り変わりや気候の変化が直接的に影響し、自然界のリズムはそのまま私たちの体に映し出されていると言えます。このことから、自然と人間は一体であり、互いに深く関連し影響し合っているとするのが、現代の東洋医学においても基本的な考え方となっています。
人体に目を向けると、そこにも小自然(小宇宙)が存在する。五臓六腑、組織・機官は、みなそれぞれ異なった機能を持ちながら、同時に全体として有機的なつながりを持った一つの自然(宇宙)のような統一体をなしています。人は自然の一部であり人の中にもまた自然が存在します。この考え方が、人と自然の関係性についての基本的な考え方です。
つまり、自然のリズムに適応した生活を送ることが健康維持につながり、逸脱すると心身の不調を招くのだと考えます。
こうした自然観を背景に、古代中国で生まれたのが「陰陽五行思想」という自然哲学です。「陰陽論」と「五行論」という二つの考えから成り立ち、東洋医学だけでなく、暦や季節の行事など、日本の暮らしにも今なおその考え方が習慣や文化として息づいています。
宇宙のあらゆる事物を、相反しつつも互いに補完し合う「陰」と「陽」の2つの性質に分けて捉える考えです。
たとえば、月と太陽、暗と明、静と動、寒と熱など。重要なのは、これらが「善悪」のような絶対的な対立ではなく、一方が存在するためにもう一方も不可欠であるという点です(相互依存)。また、陰が極まれば陽に転じ、陽が極まれば陰に転じるように、両者は絶えず変化しバランスを保ちます。東洋医学では、心身の状態を陰陽のバランスという視点から捉え、その調和が保たれていることを重視します。
自然界のあらゆる事象は「木(もく)・火(か)・土(ど)・金(ごん)・水(すい)」の5つの基本要素から成り立ち、それらが影響し合って循環するという考え方です。
これら5つの要素は独立しているのではなく、互いに助け合い生み出す「相生(そうじょう)」(例:木が燃えて火を生む)と、互いに抑制し合う「相剋(そうこく)」(例:水は火を消す)という一定の法則に従って相互作用しています。この関係性によって、宇宙や自然界のバランスが保たれていると説明されます。季節や方位、色だけでなく、人体の機能や五臓、感情などもこの5つに関連付けてと捉えられ、風水や漢方などの理論的基礎となっています。
木の性質:木が示すのは、植物が大地を押しのけて動き出すエネルギー、「成長」です。季節でいうと春、色は青、方位は東に当たります。その性質は、木が曲がったり真っ直ぐになったりしながら上に向かって育つように「曲直(きょくちょく)」とされます。
火の性質:激しく燃える陽の気であり、非常に明るく熱く、熾烈であることを示します。季節は夏、色は赤、方位は南。「天子南面す」いう言葉があるように、王が南という「明らか」な方向に向かって政治をすればよく治まるとし、火は「正しさ」も表します。火の性質は、炎が燃え上がって上にいくように「炎上」です。
土の性質:大地が地中にエネルギーを蓄え万物を誕生させるように、「生み出すこと」を示します。季節でいえば、もともとは夏の終わりを指しましたが、今日では立春・立夏・立秋・立冬それぞれの前18日間、年に4回巡ってくる土用の期間となっています。色は黄色、位置は中央。性質は、稼穡(かしょく)です。これは種をまくこと、収穫すること。つまり種を撒いて地中で養い、収穫物を生み出すというものです。
金の性質:収穫の秋には土中で育ったものが完成するように「成就」を意味します。季節で言えば秋、色は白、方位は太陽が沈む西にあたります。性質は、「従革」。原理原則に従って姿を変えて他者の役に立つ器になることを表します。一方では、春に生まれたものが、秋に刈り取られる、打ち取られるという見方もでき、「殺気が盛ん」とも考えられます。
水の性質:水が形を変えながら、万物の隅々にまで浸透するように、「潤すこと」を意味します。季節で言えば冬、色は黒、方位は北にあたります。万物を潤しながら下へ流れていくことから、その性質は「潤下」とされます。また、水は万物がこもる陰の極みであると同時に、新たな誕生のはじまり、陽のはじまりであると考えます。
五行では、季節や気候、色、味、臓腑、感情、方角など、さまざまな事象が関連づけられています。
【診断】八綱弁証(はっこうべんしょう) 患者の症状を「陰・陽」「表・裏」「寒・熱」「虚・実」という8つの基準に分けて分析します。その根底にあるのが陰陽のバランスです。たとえば、顔が赤く発熱している状態は「陽」の過剰、手足が冷え血色が悪い状態は「陰」への傾きと判断します。
【治療】偏りを平らにする 「熱(陽)があれば冷まし、冷え(陰)があれば温める」が基本原則です。 例えば、体が冷えて「陰」に傾いている時は、よもぎ(艾葉)のような温める性質(温性)を持つ素材を用います。逆に、体に熱がこもっている時や炎症がある時は、薄荷(ペパーミント)やどくだみ(十薬)のような熱を冷ます性質(涼性・寒性)を持つ素材を取り入れ、体内のシーソーを水平に戻すようにアプローチします。
【診断】五臓(ごぞう)のネットワーク 人体の機能や感情を「木・火・土・金・水」に当てはめ、内臓のどこに不調の根本原因があるかを探ります。東洋医学の「五臓」は単なる臓器ではなく、関連する働き全体のグループを指します。
東洋医学(漢方や鍼灸)では、人体を「自然界の縮図」と捉えます。陰陽学説と五行学説は、病気の根本的な原因を探り(診断)、体全体のバランスを取り戻す(治療)ための実践的な「ものさし」として使われます。
herbalinkでは、こうした東洋医学に伝わる陰陽五行の考え方をブレンド設計する際のひとつの視点に位置づけ、自然と人とのつながりを見つめるための思想として取り入れています。これによって病気を診断したり治療したりする目的ではなく、特定の症状や病気に対する処方ではありません。自然の恵みである植物と、古くから受け継がれてきた陰陽五行の知恵をハーブティーに落とし込み、日々の暮らしの中で自分自身に目を向けるきっかけとなる、「現代の暮らしの中で楽しむティー習慣」へと翻訳しています。